前回ではお風呂のフタの役割についてお伝えしました。
ただ役割がわかったところでお風呂のフタが本当に必要かどうかは意見が分かれるところ。
家族暮らしであれば何人も交代してお風呂に入るので保温効果のためにフタが必要だと感じられる方も多いでしょう。では果たして一人暮らしでも本当にフタが必要なのだろうか?
そんなことをふと疑問に思った私は、お風呂のフタの有り・無しでどれだけお湯の温度に差がでるのか試してみました。
お風呂のフタの保温効果について参考にしていただければ幸いです。
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お湯の温度測定の条件(実験条件)
今回はフタの保温効果が出やすい冬の時期にて実験しました。
おおまかな条件は下記となります。
測定時期・場所などの条件
時 期 | 2022年1~2月 |
地 域 | 大阪 ※例年1~2月の気温は2~10℃ |
建 物 | 賃貸マンション、鉄骨造 |
間取り等 | 1K、風呂・トイレ別々、角部屋、5階 |
浴槽サイズ | 内寸50㎝×98㎝×H48㎝ (約235L) |
お風呂のフタ | ロールタイプ、PP製 |
イメージしやすいように間取り図と浴室の写真を下記に入れておきます。
上記の間取りや浴室を見ればわかるようによくある賃貸マンションの一室です。
お風呂の追い焚き機能はありません。
水栓(蛇口)もシングルレバータイプではなく2バルブタイプです。
また私の部屋は角部屋なので、浴室は壁を挟んで外気となるため外気温の影響は受けやすいかもしれません。
給湯器の設定温度
一般的な賃貸マンションで使用される直接加熱方式の都市ガス給湯器(13A)を使用。
メーカーはノーリツで、2002年製造のものなので結構古いです。
給湯器の設定温度は「40℃」とします。
ただ本当に流れるお湯の温度が40℃なのかどうか怪しいので測定してみました。
その結果、給湯器の設定温度と実際のお湯の温度(実温度)については下記バラツキがありました。
上記の通り設定温度と実温度には乖離があるものとご理解ください。
正直なところ、ここまで温度差があると思っていなかったので驚きでしたね。
冬場なのでおそらくは外気温が大きく影響したものと思われます。
測定項目
今回の実験ではお湯の温度だけでなく、影響を与えるであろう外気温と浴室温度についても測定しました。
測定項目は下記となります。
・外気温
・給湯前の浴室温度
・(給湯終了後の浴室温度)
・給湯終了後のお湯の温度
・給湯終了から10分後のお湯の温度(★)
・入浴終了後のお湯の温度
「給湯終了から10分後のお湯の温度(★)」というのは、実際に入浴するタイミングを想定した時間であり、この入浴直前のお湯の温度が一番重要であると考えています。
給湯終了し、そこから脱衣して髪や体を洗ってから入浴するのに10分くらいかかるだろうという想定です。
ちなみに入浴時のお湯の温度は38~40℃、時間は15分が適切とされています。
そのため入浴時間は15分としています。
測定器具
測定器具としては信頼できるメーカーとしてTANITA製のものを使用しました。
- 外気温と浴室温度については、「デジタル温湿度計TT-573」を使用。(上記写真左)
- お湯の温度については、「デジタル温度計TT-584」を使用。(上記写真右)
試行回数
外気温や浴室温度により多少のバラツキがあると思い、フタ有り・無しでの各自の試行回数(n数)は4回としました。
お風呂の湯の測定温度(実験結果)
お湯の温度測定時には、上層と下層の温度差をなくすように必ずお湯をかき混ぜてから測定しています。
お風呂のフタ有り【設定温度40℃】
給湯時からお風呂のフタをしっかり閉めた状態にして、なるべく熱が逃げないようにして実施しました。
測定項目 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 |
---|---|---|---|---|
外気温 | 3.6℃ | 5.7℃ | 5.2℃ | 2.1℃ |
給湯直前の浴室温度 | 14.1℃ | 14.9℃ | 14.3℃ | 13.3℃ |
(給湯終了直後の浴室温度) | (14.7℃) | (15.3℃) | (15.0℃) | (14.3℃) |
給湯終了直後のお湯の温度 | 38.6℃ | 38.8℃ | 38.7℃ | 38.6℃ |
給湯終了から10分後のお湯の温度(★) | 38.4℃ | 38.5℃ | 38.5℃ | 38.3℃ |
入浴終了後のお湯の温度 | 37.4℃ | 37.6℃ | 37.5℃ | 37.3℃ |
お風呂のフタ無し【設定温度40℃】
測定項目 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 |
---|---|---|---|---|
外気温 | 5.4℃ | 4.6℃ | 6.1℃ | 3.0℃ |
給湯直前の浴室温度 | 14.3℃ | 13.8℃ | 14.6℃ | 13.5℃ |
(給湯終了直後の浴室温度) | (16.0℃) | (15.4℃) | (16.1℃) | (15.5℃) |
給湯終了直後のお湯の温度 | 38.4℃ | 38.3℃ | 38.4℃ | 38.3℃ |
給湯終了から10分後のお湯の温度(★) | 37.9℃ | 37.9℃ | 38.0℃ | 37.8℃ |
入浴終了後のお湯の温度 | 37.1℃ | 37.0℃ | 37.1℃ | 36.9℃ |
上記のデータは換気扇を回してませんが、興味本位で換気扇を常時回した状態で試したところほぼ上記のお湯の温度と同じでした。
※フタがないと湯気がお風呂場内に広がり、熱気と湿気が溜まり、お風呂場内全体がカビの温床となるため換気扇を回してみました。
結論
実際に入浴するタイミングの温度である「給湯終了から10分後のお湯の温度(★)」において、お風呂のフタ有りと無しでは0.5~0.6℃の差が出ました。
私の住まいが大阪なのでまだ冬でも寒さはマシな方ですが、東京など寒い地域へいけばいくほどフタ有り無しでの温度差は大きくなるものと思われます。
※ただし浴室温度にもよります。
たった0.5~0.6℃の差と思う方もいるかもしれません。
ただ入浴により深部体温を0.5℃ほど上昇させ一定時間おくことで熟睡しやすくなるというデータもあり、日本人の平均体温は36.8℃ほどなので意外に無視できない数値ではあります。
結論を述べると、一人暮らしではお風呂のフタが絶対必要かというとそうではないと思います。
ただお風呂のフタが有った方が保温効果が高いのは実証できたので使用したほうが良いと思います。
急な電話がかかってきたり、テレビや動画に夢中になったりしていつもより入浴するタイミングが遅れたとしても入浴に適切な温度(38~40℃)をある程度維持してくれるという点では有り難いアイテムなのではないでしょうか。